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…歩き始めて何時間たっただろう。
そびえる竹の隙間から、赤い夕焼けが覗く。
…とりあえず、小休止しよう。
そう思った誠一は、荷物をその場に下ろし、座りこんだ。
額の汗を拭うと、ポケットからコンパスを取り出した。
…太陽は西の方向に沈んでいるようだ。
「…と、いうことは北半球か?」
M4にもたれ掛かりながら、思わず呟く。
竹と北半球。
この時点で、すぐに浮かんだ地名は『日本』だった。
だが、日本にこんなに深い竹藪が残っていただろうか?
そう疑問に思いながら、コンパスの針をみていると、突然『針』が回った。
「…磁場か?」
狂ったように、クルクルと回りだす針。
…日本に磁場はないはずだ。
だとしたら、アジア…しかし、気候は日本に近い。
誠一は、狂ったコンパスをしまうと、ベルゲンの中から荷物を取り出し始めた。
とりあえずは野宿だ。
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