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3時間後
竹藪は闇につつまれていた。
誠一は簡易テントの中で、M4の整備をしていた。
基本的に野営にテントは使わないのだが、今回は問題ないだろう。
M4からドットサイトやレーザーサイトを外し、ボルトを外す。
フレームを空け、中の機関部を確認する。
「…金属磨耗なし。汚れ許容範囲内。問題なし。」
…記憶がないのに、こういう事だけ覚えているのか…。
誠一はM4のフレームをパチンと閉めた。
オプションを付け直し、5.56mm弾を込めた弾倉をはめる。
コッキングレバーを引き、装填。
これで、いつでも臨戦態勢に入れる。
M4を傍らに置くと、次はサイドアームのM93Rだ。
拳銃を分解しながら、誠一は左腕に付けている電子機器を見つめる。
『MWCD(MultipurposeWirelessCommunicationDisplay)』
いわゆる多目的無線通信機だ。
腕につけるディスプレイと胴体につける本体とバッテリーの3つで構成されている。
今までの無線機や広域無線、GPSの変わりに兵士達に持たされるようになった。最大50キロ圏内のアナログ/デジタル/レーザー等の無線通信の他、携帯やPC、GPSの機能も果たす優れものだ。
…ただ、少しかさばるのが欠点だったりする。
誠一は画面をタッチし、現在地を検索した。
画面に出てきた表示は『error』。
GPSは使いものにならず、デジタル無線は使えない。
衛星電話としての機能も、圏外と表示され使えない。
アナログの無線通信も同じくだ。
MWCDは故障していないのは確認済みだ。
…だとすれば、これが何を意味するのか。
「…分かんねーな。」
誠一はため息をつくと、掃除を終えたM93Rにスライドをはめ込んだ。
カシャンと乾いた音が、テントの中に響く。
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