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先生は、私を助手席に乗せると車を走らせた。
機嫌が悪いのか、考え事をしているのか終始無言の状態だ。
美雪はじーっと藤村の様子を伺う。
そんな美雪に、藤村は見られる事に耐えられなくなり、車を路肩に停めた。
「…あのな、最近のお前は自覚が無さ過ぎなんだよ」
いきなり始まった藤村の説教に、美雪は目をパチクリとさせ驚いている。
「あんまり無防備でいるなよ。みんな、お前を狙ってるんだ!」
「…へっ?勉強の事を言ってるんじゃないの?」
素っ頓狂な声に、藤村はガクッと下に俯いた。
そして憎くても恨めない美雪の顔を見て、強く抱きしめた。
「……それ以上可愛くなるなよ。クラスの男子も八百屋の親父も、みんな鼻の下伸ばしてた」
「うそ~!?それは、ないよ!由樹の考え過ぎだよ」
それでも美雪は藤村の背中に、手を伸ばし抱き返す。
背中をポンポンと小さい子供をあやすようにされた。
(…何、嫉妬してんだ?俺は…)
「……由樹、大好き」
「………」
そう囁いた美雪の言葉に、藤村は返事の代わりにキスをした。
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