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美雪は駅で電車を待っていた。
乗らずに、何本目かの電車が発車して行く。
その電車を美雪は、いつまでも眺めていた。
あぁ…
このまま、先生と連絡が取れなくなり、音信不通になって終いには自然消滅していくのかな…
想像すると、目頭が熱くなってきた。
こんな、駅のホームで泣くのは嫌だ。
美雪はそっとハンカチで目頭を押さえた。
その時、駅のドアが開いた。
「美雪ちゃん!?どうしたの!?」
先生かと少し期待してしまった自分が痛い。
相手は先生の向かいの精肉店の佳奈だった。
前にいろいろあった佳奈だが、今では仲良くなった。
「…佳奈さん…」
「……さっきね、配達の時に美雪ちゃんが駅へ歩いてた姿を見たの。今、配達の帰りで、もしかしたらって思って覗いたら、まだ居たんだもん。」
「……はぁ」
「…どうしたの?歩いてた姿が、落ち込んでいたように見えたけど?」
「………」
一度口を開け、言おうとするが美雪は躊躇い、言葉を飲み込んだ。
「美雪ちゃん?由樹のこと?」
「……はい。前の彼女さんが、うちの高校に来たんです。そしたら、もう学校でも逢えない、本屋にも来るなって言い出して…」
「…でも、逢いたくなった。そしたら、二人一緒だった?」
美雪の代わりに佳奈が先を言ってくれた。
当たっていたから美雪は驚き、それに対して頷いた。
その美雪の様子を横目で見ると、佳奈は大きな溜め息を吐いた。
そして心の中で呟く。
(…何やってんのよ~…馬鹿由樹…)と。
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