ヲタ的☆独りの週末

7/13
前へ
/292ページ
次へ
「…はぁ…はぁ…」 藤村は駅まで走っていた。 美雪の傘を持って。 最後に千代子は、一万円札を出してきて、お釣りを渡すのに時間がかかってしまった。 もう直ぐ目の前に、駅が見えて来た時に軽トラが横に停まった。 「……はぁ…」 見覚えのある、配達の軽トラを横目で見ると、藤村は場が悪そうに顔をしかめた。 案の定、ウィーンと窓が開き佳奈の顔が見えてきた。 「……何してんの?美雪ちゃんなら電車に乗って帰ってたわよっ!」 「…そうか…」 藤村は持っていた傘を見つめ呟いた。 「……美雪ちゃん、凄く不安がってた。心配させちゃ駄目でしょ?理由があるんなら、ちゃんと直接教えてあげなさいよ!」 凄い剣幕で、佳奈は容赦なく言ってきた。 「…わかってるよ…」 「わかってない!美雪ちゃんの気持ち、わかってないから追っかける羽目になるんでしょ!?」 「………」 ここまで藤村に言えるのは、小さい頃から知っている佳奈だけだ。 さすがに、藤村も何も言い返せれない。 「……美雪ちゃんも、由樹の事や受験の事で悩んでいるのよ?ただでさえ、ナイーブな時期に何してんのよ!美雪ちゃんとの付き合いが本気じゃないんなら、別れなさい」 「…あぁ…わかってる…」 佳奈は藤村の表情を見て、言うだけ言うと車を走らせ去って行く。 それ以上言う必要がないからだ。 藤村は、ちゃんと真剣な顔をしていた。 「……」 .
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

639人が本棚に入れています
本棚に追加