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「………」
亜由美が呆れた顔で見ている。
それもそうだ。
今日は朝から、美雪の顔は締まらないのだ。
ボーっとしているかと思えば、ニタ~と思い出しては笑う、はっきり言って気持ち悪い。
そんな美雪を亜由美は、参考書を読む手を休めて呆れ顔で見ていたのだ。
「……もう、朝から何?良いことでもあったの?」
これは聞かないと、美雪を叩いてしまいそうなので、亜由美は半ば仕方なく聞いた。
「聞いてくれる?由樹とデートしたんだよ~!夜だったから、少しの時間だったんだけどねっ…」
目を輝かせ、幸せそうに話す美雪を亜由美も嬉しくなり笑みがこぼれた。
「…はいはい…先生の事ね~。そんなこったろうと思ったけどねぇ」
再び参考書に目を遣り、亜由美が適当に相槌をする。
藤村と逢えなくて、落ち込んでいる美雪の姿より全然マシだ。
「…でも、気をつけなさいよ?」
「何が?」
亜由美はパタンと参考書を閉じ、真面目な顔つきで言うと美雪の気の抜けた声がした。
「美雪と先生が一緒に居る所なんて、見られたらマズいって話!」
「あぁ、それは多分大丈夫だよ。逢うのは今度から週末の夜みたいだし」
美雪の返事に、亜由美はガクッとうなだれた。
何て呑気な事を言っているのだろうと思ったからだ。
「あんたねぇ…ι」
亜由美がキョロキョロと辺りを見回した。
丁度昼時で、生徒は何人か教室にいるだけだ。
それでも、最善の注意をして美雪の耳にコソッと喋る。
「…何時、誰が何処であんたの話を聞いてるかわかんないんだよ?少しでも怪しいと思われたら、美雪は良くて停学。悪けりゃ退学!先生も学校辞めさせられて、もう教師になれないのよ?」
「…わ…わかってるよ…。充分気をつけます…」
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