639人が本棚に入れています
本棚に追加
「……だから、避けてたのか?」
吐き出した煙が、辺りに広がり消えていく。
「…うん」
ここの所、美雪は学校で由樹を避けていた。
他人の視線ばかりが気になり、何かに怯えるように過ごしていた。
今は、美雪の家の近くの公園に来ていた。
暗くなり、夜が一層深くなっている。
最近では、由樹の本屋に行く事さえできないでいた。
「…じゃ、今は平気なのか?ん?」
ブランコに座り、由樹には似合わないと心の中で笑っていると、気づいたのかブランコのチェーンを引っ張ってきた。
「うわっ」
座っていたブランコが大きく揺れて、隣に座っている由樹に引っ張られ近づく。
「…今はどうなんだよ…?美雪」
「……今は大丈夫…」
最後まで言い終わらない内に、言葉は飲み込まれた。
「…ん……」
少し煙草の香りが残る唇が、重なってきたからだ。
「………」
唇が離れて、由樹は何か考えているようだった。
「……由樹?」
「どうしたら、ゆっくり逢える?俺の家でも駄目で、こんな所にいたって、通りすがりの誰かに見られる可能性だってあるだろ?」
由樹が考えている事が、自分の事だと知り美雪の顔が綻ぶ。
「……何だよ?」
そんな美雪に気づき、すかさず由樹が聞いてくる。
「いや…何か、嬉しいなって思って…」
「……俺だって、もうそんなに若くないって思ってたんだよ…」
由樹の返事がおかしくて、美雪は頭にハテナマークが浮かぶ。
.
最初のコメントを投稿しよう!