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朝ご飯も食べずに美雪は家を飛び出した。
走って駅まで行くと、既に亜由美の姿があった。
「…はぁ…はぁ…あゆちゃん、おはよ~」
亜由美はベンチに座り、参考書を見ていた。
「おはよ!寝坊したの?」
「ちょっとね…ιあゆちゃん、勉強してたの?」
亜由美は参考書を鞄の中へしまい込む。
「うん。今日から三年生でしょ?美専行くからには、勉強頑張らないとねι」
今日から新学期が始まり、自分も受験生なんだと痛感する。
亜由美と較べ、自分は何にも考えていない事に気づく。
「…あゆちゃん、美容師になりたいんだ?」
「うん!おしゃれが好きだし、憧れなんだよね~」
少し照れくさそうに笑う亜由美に、美雪は自分が恥ずかしくなってきた。
「………」
「……美雪は、ちゃんと夢があるでしょ?」
「へっ…?ないよ!?何もないから不安だよ!?」
「…先生と結婚っていう夢があるじゃない♪」
一瞬、亜由美の言ってる意味がわからず固まってしまった。
「なっ…!?何言ってんの~!?」
本気でそんな事を言ってるのかと、亜由美に全力で否定する。
自分がそんな事考えてると思われているのも嫌だった。
三年生になり、一層ピリピリしているのに、一人だけ呑気に浮かれてると思われたくなかった。
「そうなの?私はてっきり、卒業後は先生と一緒になるんだと思ってた」
「…それは、ないよ。そりゃ、結婚したいぐらい好きだけど…」
最後の言葉が小さくなる。
先生は大好きだけど、結婚だなんて夢のような話でしっくりこなかっからだ。
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