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家でもある本屋に着くと、居間で祖父は美雪が作った夕飯を食べていた。
佳奈に教わり、たまに食事を作ってくれる美雪は、祖父公認の付き合いになっていた。
美雪は台所に立つと、藤村の分の夕飯を温めだした。
火を付けたコンロを止め、すかさず美雪の動きを止めた。
「…帰るんだ。お前、受験生だろ?ちょっとは勉強しろ!」
「……ちゃんとしてるよっ!それより、何で言ってくれなかったの?担任になった事!」
「言おうとしたけど、朝、美雪が電話切ったんだろ?」
美雪が朝の出来事を辿っていくと、思い出したようにあっ!っと声を出した。
「そっか!朝の電話って、その事だったんだ」
「……」
「…由樹?」
何の反応がない藤村に、美雪は顔を覗き込んだ。
「あ…何でもない。ほらっ、帰るぞ」
美雪の手首を引っ張り、台所を出て居間を通り抜けた。
出る際に、ちゃんと祖父に挨拶しているから、いろんな意味で感心した。
本屋の入り口にさしかかった時、美雪は凄い力で手を離した。
「Σはぁー!!これっ!私の好きな作家さんの新刊だ!」
またもや、目を輝かせ買おうか悩んでいる美雪の手から商品を置いた。
「もう、店終ってんだよ」
「Σあー!ケチっ」
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