~第3章~忘れられぬ過去と現在

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椿の冷めきった瞳は何も写さず、口が誰かに操られているかのように感情が込もっていなかった。   「身内がいない子供を集めては道具として扱い、用がなければ切り捨てる。使えない奴も同様に……」   恵が黒幕と言った意味が漸く分かった、戒・麻奈・豪の三人。 自分の手は一切汚さず、罪を擦りつけてしまえば用済みという話。   元を断たない限り、幻死団は消えないだろう。 しかし、何故そうなったのか根本的な原因が掴めていない。 戒は徐に口を挟んだ。   「椿、幻死団と化したきっかけは?」 「さぁ?颯様の指示に逆らえば命はない。そう教え込まれてきましたから、颯様自身に何かあったと……」   幻想館から幻死団と変わり行くのを目の当たりにしてきた椿も、大元の理由がはっきりしていない。 やはり元凶である颯を潰さない限り、光は見えないだろう。   「野崎先生から何かありますか?」 「椿君が此方側にいる以上、相手は何かしら仕掛けて来るでしょう。よって、戒君と綾君の怪我が治り次第、強化トレーニングを行います!」 「「「………はい?」」」   なんとも覇気が感じられない返事に、恵と椿は苦笑いするしかなかった。 六人が集合してから、一度も口を開いていない綾。先程から口に手を当て、考え込んでいた。
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