~第1章~悪夢に蝕まれる日常

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暗く冷たい。 それが此処の印象。 辺りは真っ暗で、自分が此処に存在するのかも不確か。   『…カ…イ……』   聞き覚えのある少女の声。 そして自分を呼ぶ、切なく痛々しい声。 存在しない筈の声。   「雫(シズク)?」   死んだ筈の妹の名前を呼ぶと、闇が揺らぎ、少し明るくなった。   『…戒……オ…兄…チャン』 「雫、何処だっ!?」   一心不乱に走り回り、雫を探す。 息が乱れ、心臓の音が耳を犯し煩い。   「雫?」   目の前に佇む少女に目を奪われて、恐怖と悲しみと罪悪感に襲われる。 少女はゆっくり微笑んだ。   『…ドウ…シ…テ?…嘘…ツキ……』 「雫、アレは……」   有り得ない量の血が雫の口から噴き出し、いや……口だけじゃなく全身から溢れ出る。 そしてスローモーションで見ているかのように、雫が倒れていく。   『痛イ……助ケ…テ…戒…オ兄チャ…ン』 「雫!!」   目の前で助けを求めているのに、手が届かない。 近付きたいのに足が動かず、見てる事しか出来ない事に苛立つ。 死んだ妹を助けようと必死になる。   『痛…イヨ……オ…兄チャ…ン…』 『アハハハハッ』 「雫ーーーーーッ!!」   真っ赤な池に横たわる妹。 乾いた男の笑い声。 何も出来ない自分。      
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