~第1章~悪夢に蝕まれる日常

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目の前の赤と黒に吐き気を覚え、居ない筈の人間に悲しみが溢れ、目眩を感じた。   「雫ーーーー!!」   布団を蹴り飛ばす勢いで起き上がり、汗で張り付いた前髪を掻き上げる。   「ッ…まただよ…情けないよなぁ……」   毎度この悪夢に蝕まれ、目覚めは最悪。   「戒ッ!毎度々、俺の睡眠妨害するのも程々にして欲しいな。魘されるのは勝手だが、俺に迷惑かけるような事は控えろ!!」 「綾…ごめん…」   いきなりノックも無しでドアを蹴破り、無遠慮に部屋に入って来た事に文句を言いたいが、自分に非があるので何も言えない。   文句を言ってきたのは、月城 綾(ツキシロ リョウ)。 セミロングの銀髪に、薄い蒼と紫の瞳で綺麗な顔立ち、スラッとした長身のモデル並みの男だが冷淡。 そして文句を言われ縮こまっているのは、武藤 戒(ムトウ カイ)。 ショートの黒髪に、碧と蒼の瞳で童顔の可愛い顔立ち。 綾と違い小柄で、人当たりが良い。   外見性格共に全く正反対の2人は一緒に住み、仕事場ではパートナーとして常に行動を共にしている。   「支度して行くぞ。課長に嫌味を言われるのは、勘弁だからな」 「うん!」   綾は戒の魘されていた原因を聞かない。 それが戒にとって、綾の優しさに思えた。   綾が部屋を出て行った後、戒は左腕に刻まれた蝶をギリッと指が食い込む程、握り締める。      
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