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朝日がキラキラと朝露に濡れる木々を照らす……
訳もなく、2人は暗い海に浮かぶ白い海月を追うように、走り続ける。
「寒いな~」
「ズベコベ言わずに走れ!」
「ケチッ!」
早朝と呼ぶには、まだ早い時間帯。
戒は寒いなら……と手に息を吹きかけながら走った。
「そんな事してると舌噛むぞ!?」
「へーき、へーぎでッ!」
「言ってるそばから……」
ガキンッと音が聞こえそうなくらい、綾の言葉通り舌を噛んで涙目の戒に、やっぱりな……と綾は視線を投げかける。
「む~~~、あッ!」
ふてくされていた戒が何かを思いついたらしく、笑みを零す。
「こへなら温かひ」
綾の右手が何かに掴まれた。何かなんて分かりきっている。
「お前なぁ?一言言ってからやれよ……」
「言っへかららほ、やっへふんないひゃん!」
「何言ってんのか分かんねーよ!!」
戒は綾の手を握っていた。
平然と握る戒に呆れつつ、綾は振り払うことはしない。
「遅刻するぞ!」
「早ふッ!」
手のひらから、お互いの体温と鼓動を感じる。
体温は戒の方が高く、鼓動は綾の方が早い。
「温へ~~」
「分かったから、それ以上何も言うなッ!!」
耳がほんのり赤くなっている綾は、寒さで赤い訳ではないようだ。
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