奏の回想・1。

3/3
前へ
/21ページ
次へ
「これって、運命だと思わない?」 ささやく声に甘い痺れを感じた。 奏歌の言う通り、運命かもしれない、と思った。 それから、奏歌と俺はいつも一緒に行動するようになった。 一週間くらいたった頃だろうか。 昼休みの教室で、いつもの様に二人で話していると、部活の話題になった。 「ねぇ奏。入りたい部活とかある?」 「ないね。やりたいことも無いし。」 「じゃあ放課後ボクについてきてよ!」 「どこに行くんだよ…」 「吹奏楽部の体験入部!」 そう言って四角いケースを持ち出した。 「なんだそれ?」 「この中に楽器が入ってるの。」 「へぇー。そういえば、奏歌は楽器は何をやってるの?」 「トランペット!」 そう言いつつケースの中からトランペットを取り出す。 「ああ、らっぱか」 「らっぱじゃなくてトランペット!らっぱって言い方は嫌い」 「なんで?」 「カッコ悪い」 「お前…」 「いいの!なんにしたってこだわるのも大事なんだから!」 奏歌はトランペットを構えた。 「お、吹くのか?」 「うん。まあ聞いててよ。」 奏歌の息を吸う音が聞こえ、 小さな小さな演奏会が始まった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加