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漆黒の闇。
浮かぶ満月。
ざわめく木々。
静かに流れる風の中、二人は何をするでもなく、ただただ満月を見つめて時間が過ぎるのを待つ。
時が経つにつれ、月の角度が変わるのを、一瞬と思う一人と、そうでないと思う一人。
『時が経つのは、速いものよなぁ。』
祭壇の様な岩に座る男が言う。
この時代に髷も結わず、頭の高い位置で結った髪は腰まで伸び、静かに風に靡く。
整った浮世離れした顔立ちが、月明かりで更に妖艶さを増していた。
『そう思われるのは、あなた様だけでございます。わたくしには今宵の終わりが来ないような気がいたします。』
仕立ての良い着物を纏う幼さの残る少女が振り向いた。
『初めてお会いしたあの時から、あなた様だけは変わらずいらっしゃるのに、わたくしも流れる季節も幾度年を重ねた事でしょう。』
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