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久しぶりに足を踏み入れる祖国の地に、彼――セファイドは感無量だった。町並みも何も変わらない故郷に嬉しくなりながら、友人に会うために城へと向かう。
「や。久しぶり」
城門に着いて、門兵に軽く声をかける。すると、彼らは一応に驚いた表情で、
「セファイド様!!?」
「様なんてつけるなよ。俺は一般人だぞ」
むっと眉根を寄せれば、今度は慌て始める彼ら。面白い反応に心の中で笑いながら、
「レオはいるか?」
「将軍なら、現在出陣中です。昨日出立されたばかりですので、すぐには戻らないかと・・・」
「え、マジ?」
こくりと頷く門兵に、セファイドはがくりと肩を落とした。肩を落とすどころではなく、地面にめり込むんじゃないかと思うほど、影を背負いながら。
セファイドとレオニールは、いわゆる昔馴染みだった。物心ついた頃から一緒にいて、レオニールが騎士になると言い出し、セファイドも旅に出ると言い出すまで、ほとんどの時間を共に過ごした。お互いの道が分かれた後も絆は繋がっており、時々帰ってきた時には城に顔を出すことにしていた。
今回は、本当に久しぶりの帰郷だった。別に道に迷ったわけではない。そう、決して。別に普段とは違う道を歩いていたとか、気付いたら谷底に落ちていたとか、そんなことは決してない。決してないが、土産として積もる話もあるし、見慣れぬ置物なども仕入れてきたのだが・・・どうやら全て持ち越しになりそうだ。
「あ、あの、将軍が帰ってこられるまで、待たれては・・・?」
一気にテンションの下がったセファイドを見ていられなかったのだろう。門兵が控えめに提案してきたが、セファイドはゆっくりと首を振った。
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