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「あれ、セファイドじゃないですか。戻ってたんですか?」
本を抱えたシズスナの登場に、セファイドは変わらぬ笑みを浮かべたまま、
「うん。久しぶり、シズスナちゃん」
「はい、久しぶりです。陛下もいらっしゃるなら、こんな場所で立ち話なんてしないで、中に入ってはどうですか?」
シズスナの提案に、立ち話どころか、口論までしていた二人は互いに互いの顔を見合わせた。そして、
「・・・そうだな。いつまでも外にいるわけにはいかないだろう」
アキレスのこの言葉に、シズスナが首肯する。だが、セファイドだけは、
「いや、そんな長居するわけにはいかないって。これから宿探さなくちゃいけないし」
レオニールがいたなら彼と一晩語り明かそうかと思ったが、あてが外れてしまった。これから違う町まで移動していては日が落ちてしまうし、野宿はできるだけしたくない。今から宿を探し始めれば、一部屋くらい見つかるだろう。
そう思っていたのだが。アキレスの言葉に、思わず絶句してしまった。
「宿など必要ない。城に用意させる」
だからさっさと歩け、と。言葉にせずとも背中を押され、セファイドはたたらを踏みながら、
「え、別にいいよ。迷惑だろ」
「お前一人くらい、迷惑でもなんでもない。俺を誰だと思っている」
何故か胸を張って言うアキレスに、セファイドは一瞬だけ目を見開いた。だが、すぐに再び表情を崩すと、
「じゃあ、お言葉に甘えて。お世話になります、国王陛下」
ぺこりと頭を下げながら礼を言えば、アキレスも満足そうに頷いた。
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