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「さて。今更説明するのもどうかと思うけど……君達は三年生になった事で、一つの権利を得た。」
そう告げると大熊は、右から左へとゆっくり生徒達に視線を向けていく。
直井の席は窓際一番後ろと、文句などあり得ない最高の位置だ。
教師とは違う角度から教室内を見渡す事ができる。
だから見えたのだが、男子数名が大熊の視線から逃れようと下を向いていた。
無理もない。
あの教師は視線一つとっても暑苦しい。
「五年前から"召喚システム"が導入されたのは知ってるね。高校が義務教育になり、三年に上がると同時に"召喚石"の保持が義務付けられた。召喚学は国の定めた必修科目さ。当然、君達もこれから学ぶ事になる。」
召喚システム。
それは国が……否、"世界が決めた新たな身分証明"
「君達にこれから渡す石は、絶対に無くしてはならないものだからね。これは君達の"力"であり"権利"であり"究極の自己証明"。なくせば人権さえもなくしてしまう。くれぐれも、粗末に扱わないようにね。」
ざわめきが教室にうまれた。
それが嬉々めいたざわめきに感じるのは、おそらく直井自身もドキドキしているからだ。
当たり前だ。
五年前から始まったこの制度。
その要となる石を、どれだけ切実に欲しいと感じた事か。
「専門的な話は授業までとっておこうか。さぁ……あらためて言わせてもらうよ。おめでとう諸君。君達は今日から"召喚士"だ。」
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