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「お父さんとお母さんも一緒だったら良かったのにね。」
「しょうがないよ、仕事だし。姉さんが買い物に行くなら、僕も召喚石の加工してこようかな。」
「良いんじゃない?早いうちに加工しておいた方が何かと楽だし」
と、夏姫は苦笑しながらアクアを見る。
「ほらアクア、行きましょう。いつまでも明の後ろに隠れてないで……あぁもう……ゴスロリは冗談だってば」
『本当に?』と目で尋ねるように、アクアが直井の肩越しに顔をだす。
普段はクールな彼女だが、この姉の前ではこんなものだ。
「………よし。今日はアクアの食べたいものを一品追加してあげる。」
「………!」
召喚獣は食事も出来る。
養分になることはないので完全に意味がない行為だ。
だがまぁ、それでも食事を与える人間は意外と多い。
これはもう理屈云々ではなく感情的なものが多く含まれた結果だ。
それに召喚獣とて味覚はある。
美味しいものは美味しいし、アクアは直井と夏姫の料理を好んでいる。
目の色が変わるのを、夏姫は見逃さなかった。
「だからほら、早く行こう?」
アクアが直井の元から離れた。
交渉は無事成功したらしい。
彼女が夏姫の後ろに控える様に立つと、直井は改めて思う。
やはり、アクアは夏姫の召喚獣なのだ。
他の誰よりも、夏姫の傍が良く似合う。
少し羨ましくなった。
同じく召喚獣を手に入れた今、僅かだが姉を尊敬してしまう。
自分も。
自分も、誰かが見た時に、そう感じてもらえたら、これほど嬉しい事はない。
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