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直井 明。 彼は地で真面目を突き進む少年である。 男にしては肌の色が白い方で、雰囲気が柔らかく線が細い。 前髪が少しだけ目にかかっていて、割りと端正な顔立ちをしている。 だがその整った顔は男性と言うより女性寄りだ。 なので女装させると、これがまたよく似合う。 去年の文化祭で全学年を対象に、クラスから一人男子を女装させてその可愛さを競うコンテストが催されたのだが、直井は満場一致でクラス代表に選ばれた。 結果は全クラス中第二位と、十分過ぎるほどの健闘をみせ、それがトラウマになっているのは直井だけの秘密だ。 そんな訳で、彼は高校三年目に突入したにも関わらずいまだに学校指定である紺のブレザーが恐ろしく似合わない。 いや、そもそも男物と呼ばれる衣服が似合わないのだ。 社会人の一歩手前にいながら、ここまでスカートが似合う男もまた珍しい。 それほどまでに少女要素が混ぜこまれている直井だが、根が真面目な事もあり外見をからかわれた事はない。 文化祭では女装をさせられてしまったが、女装した直井を見てクラスメートは笑ったりするどころか本気でコンテスト優勝を掲げて無駄に協力を惜しまなかった。 第二位と発表された時のクラスメートのブーイングの凄まじさを、直井は今でもはっきりと覚えている。 中でも飛び抜けて文句を言っていたのが、吉川 弦。 たったいま、直井に声をかけてきた人物だ。
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