第3章~6月9日はパチュリーの日…だと…?~

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極力話したくない相手だがこいつが沈んだ面をしているのを見るのは初めてだったので会話のボールを投げ返してやることにした。 「どうしたんですか?そんな顔して」 阿部は沈んだ表情を維持したまま僕を見つめる。 うん、相変わらずのイケメンとやらなので様になっているが、生憎僕にとっては自宅の軒下にスズメバチが巨大な巣を作っててそれを発見した気分だ。 気持ち悪い上にめんどくさい。 最悪だな。 「あのな、ここゲイ専だろ?なんで女やら女やら女がいるんだ?男にいたっては裸の奴すら一人もいないノンケだけなんだが…やれないか……」 「は、はあ…いやゲーセンには普通女の子も男の子も沢山いますが…ゲーセンの何がそんなに不満なんですか?」 「いや不満もなにも、ゲイ専なのになんで女がいるっていう事実がおかしすぎるぜ。例えばガチムチパンツレスリングに女が出てくるくらい異常。有り得なさ過ぎじゃないの」 なんでこいつはゲーセンに女がいるのがそんなに気に食わないんだ(ガチムチパンツレスリングってなんだよ)。 いくら性格と趣味がアレでもゲーセンに女がいるのは当たり前の事実だと認識しているはずだが。 「これじゃあまるでノンケの塊、ゲームセンターじゃないの」 「いや"これじゃあまるで"って言うよりむしろゲームセンターなんですが…あっ!」 わかった、こいつアホだ。 「あなたまさか…あなたの言う"ゲーセン"を省略なしで言ってみてくれませんか?」 阿部は沈んだ表情から僕を見つめて不思議そうな顔へと変化させた。 彼はゆっくりと口を開いて勘違いの元凶を紡ぎだす。
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