第1章~どうした?笑えよベジータ~

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「兄さん…」 「どうした?弟よ」 緑の帽子が心なしかくたびれて見える。 いつもとぼけている弟がここまで打ちのめされているとは。 赤とMがトレードマークの配管工はじめじめした地下道で弟の消え入りそうな声を敏感に察知し、振り向いた。 「僕、これ以上兄さんとピーチ救ってくの無理だよ」 「おいおい、なぁに言ってんだよ。ノコノコの甲羅に当たったくらいで」 弟は俺が踏んで甲羅になった赤ノコノコが滑り出しているのを見、踏んで止めようと試みた所、当たってしまったのだ。 運悪くジャンプの角度が高すぎたのが原因だ。 すると緑の帽子の鍔に隠れていた顔が不意にあげられた。 その顔には怒りが見て取れる。 「当たったくらいで?あれはそもそも兄さんが僕が兄さんへ向かってる甲羅を止めようとしたら、突然下から兄さんがジャンプしてきてそれでジャンプの角度がズレたんじゃないか!それをさも偶然のように!なんて兄だ!」 とぼけた性格の弟からは想像出来ない怒りの声が弾けた。 弟はまだ腹の虫がおさまらないようで怒りの顔がますます険しくなっていく。 俺はというと、この方三十年以上も一緒にピーチを救ってきた弟がこんなに怒りを表すとは想像出来ずに口を開けて固まっていた。 「だいたいだいたい、最新作じゃ僕が一切報われてないじゃないか!テメーはいつもいつもエンディング後にピーチ城でピーチとギシギシアンアンやってんだろ!僕はピーチ城に入ろうとしたらクッパの残党に襲われるか、キノピオに入城を拒否られんだよ!クソ!やってられっか!」 弟はそう言うとどこからかファイアーフラワーを取り出し、口に入れ燕下した。 「お、おい。弟よ、なにやっ」 「うるせえ!クソ兄貴!これでも喰らえクソッタレ!」 ぽんっ 聞き慣れた音を出し、高温の固い物体が跳ねながら高速で向かってくる。 どうやら普通のファイアーよりも数段速く、それでいてステージに設置されている炎バーの火の玉らしい。 これは…避けれないッ! 「うわあああああああああああ…」 赤くMの文字が踊っている帽子が静かに 「ぱさ」 落ちた。 ――――――
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