プロローグ~出会い(笑)~

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長かった入学式も終わり、校則書類やなんやらですっかり重くなった肩がけバックを背負って家へと急ぐ。 そして桜が舞う通学路を歩きながら、これから過ごす高校の校舎へと目をやった。 校舎は綺麗な橙に染まり薄く出来た影はその形をだんだんと傾けていく。 僕は高校の横の街へと続く歩道を一人バックをからって家へと向かう。 これからの高校生活に期待と不安を感じつつ、まだ残る入学式の余韻を噛み締めていた。 ある程度高校から離れ、橙色に染まった校舎が小さくなった頃には住宅街の道路と県道との交差点に差し掛かる。 県道の両側には街路樹が等間隔で植られていて、住宅街に爽やかな雰囲気を付加させている。 そして自宅のある住宅街へ曲がろうとした瞬間、後ろから声がかかった。 「ちわーっすwwww三河屋でーすwwwwwwwwうぇwwwwうぇwww」 声のした後ろを振り返えると同じ歳くらいの女の子がニヤニヤ笑っていた。 「がっ」 突然のことに驚いて尻餅をついてしまい、しかも痛みで変な声が出てしまった。それを見て彼女が奇妙な笑い方で笑う。 「ぬwwwるwwwぽwwwww言えたwwww言えたwwww今年初wwwwwwwぷぇwwwww」 気に障る笑い声をあげながらぬるぽ、ぬるぽ、と連呼する彼女はとても奇妙な格好をしている。 ダメージジーンズと言うのもおこがましい、カラスにつつかれ中身を引きずり出されたゴミ袋のようなジーンズに、迷彩のジャケットを着ている。 端から見るとどこかの国の死にかけた民兵のような出で立ちだ。 腹を右手で押さえ上半身を傾けて左手を僕の方へ向けながら 「プギャーwwwwwwwwww」 …なんだろう。この言葉の意味はわからないがなぜか馬鹿にされているような気がする。 僕はこの奇妙な格好の女の子の顔を見る、というよりは睨みつけた。 なぜなら、歩道の真ん中で尻餅をついた僕を通行人が踏み付けそうになった犬のフンのような目で見ていったからだ。くそ、屈辱だ。 恥ずかしさと怒りの混ざった目で彼女を見ると、彼女も僕を見返す。 「!」 思わず息を呑んだ。 女の子の表情は今だに笑いの形に崩れているが、黙っていればかなり可愛いのかな?と感じる雰囲気を纏わせていた。 やがて彼女は笑うのを止め、僕の顔をじっと見る。
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