第3章~6月9日はパチュリーの日…だと…?~

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「ヴィちゃんになんかしたら私が許さないからね!わかってる!?」 後ろの母から鋭い声がかかる。 僕は右手をあげて答えてバックをしっかりと肩にかけ直し、指定通学靴へするりとつま先を滑り込ませた。 靴へと下げていた目線を上げるとヴィの背中が外へと完全に出ていたところだった。 さっとドアの隙間に手を入れて引っ張り体を滑り込ませる。 開けた瞬間に春の暖かい陽気が体を包む。 先に出たヴィの姿はすでに道路へ出て僕が来るのを待っていた。 「ほら行くお…」 やはり少し沈んだ声で僕を急かすのだが、こうも元気がないヴィはなんだか落ち着かない。 「どうかしたんですか?部屋を出てから元気がないじゃないですか」 僕は隣を歩くヴィにそう声をかけるが沈んだ様子は変わりそうにない。 気味の悪いヴィの沈黙が僕の周りを完全に取り囲んだとき、ぽつぽつと隣から声が聞こえ始めた。 「…ブツ…ブツ……安価やんないほうがいいんかお……ブツ…」 相変わらず言っていることが理解出来ないのでどう反応していいか分からない。 安価ってなんだ?安売りのことか? とりあえず何かヴィのテンションなり雰囲気なり変えることが起こって欲しいものだが。 そうこう僕が考え込んでいるうちにヴィとの距離が1メートル程離れてしまっていた。
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