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呆気に取られて僕は彼を見つめる。
右手を僕に差し出し微笑を浮かべる彼はなんというか、ジャニーズというか僕世代の女子たちにかなりモテそうな、俗に言うイケメンだった。
うん、カンに障るがここは自分を抑えよう。
目をつぶり深呼吸をしていらつきが引くのを待って僕は彼を再び見据えた。
それにしてもさっき彼は「やらないか?」「そんなにケツを突き出して」などと言っていたが何をするつもりなのだろうか。
うさんくさく彼を見ていると青ツナギ姿の彼は、さらに胸のチャックを開き厚い胸板を露出させつつ僕に手を差し出す。
「あ、ありがとうございます…」
僕はそう言って彼の手を握ろうとしたがそれは途中で止まってしまう。
彼は不思議そうな顔をして僕が見ている方向を振り向いた。
「はっ…はぁぁぁぁキターーーー!!」
僕達二人の視線の先にあったのは、素晴らしい瞳の輝きと、まるで長年ファンだったグラビアアイドルと密室で二人きりになるという予言を聞かされた男子中学生のような挙動をしているヴィだった。
僕はいままでの落ち込みから劇的に回復したヴィを見、驚いて数歩分後ずさったが彼は冷静に、落ち着いてやかましい制服姿の死神を見ている。
そして口元には全てを許すかのような微笑みと優しさが蓄えられていた。
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