第3章~6月9日はパチュリーの日…だと…?~

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ベンチの彼と目を合わさないようにしてヴィの顔を見る。 だが彼女の表情は彼への羨望そのものでさっきの過去ログうんぬんの落ち込みはなんなんだったんだ、と言いたくなる程の変わり様だ。 まさか一目惚れ? いや、ないだろうな。 「もしもし?ヴィさん?」 「はぁぁぁぁぁぁっ…阿部さん、リアル阿部さん…」 恐る恐る声をかけてみると案の定無視された。 ああめんどくさい。 「やらないか?」 「うわっ!えええ遠慮しますっ!」 めんどくささに肩を落としていると突然耳元でささやくような彼の声が耳にぬるりと進入してきた。いや侵入してきた。 慌てて後ずさってその声から脱出する。 「そんなに恥ずかしがって…可愛いじゃないの」 余計に彼を燃え上がらせてしまったようだ。 ああとってもめんどくさい。 視線を下に落としたとき右手の腕時計がちらりと見えた。時刻は遅刻まで10分を指している。 「ヴィ、はやく学校いかないと遅れますよ?こんな人放っておいてさっさと行きますよ」 ヴィの耳元で声を潜めて言うと今度は通じたようで僕に顔を向けた途端に悲しそうな顔をする。 「せっかくリアル阿部さんに会えたのに…」 必死なヴィの顔を見て僕はまた一つため息をついた。 これは引きずってでも連れていくしかないな。 そう思いたってヴィの制服の襟を掴み、阿部和雄さんとやらに振り向く。 彼は右手をぴくりとあげて僕の目線に応え、両手を広げた。 何を期待していやがる。 「さあ、やら…」 「それでは阿部さん、またいつか」 「あああ阿部さ~ん!」 阿部さんの言葉を途中で掻き消した僕は、ヴィの襟を掴んだまま学校の方向へ力強く歩を進め始めた。
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