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そいつは、雨に打たれて、泣きそうな声で鳴いていた。 …なんて事はなくて。 その日は、これでもかというくらい暑かったのを覚えている。 気象予報士もびっくりの炎天下。 俺は、小学校から、走れば30秒もしない自宅までの道を歩いていた。 『わんっ』 …聞かなきゃ良かったなんて思ってみても、聞いてしまったもんはもうどうにもならなくて。 声のした方を振り向くと、やっぱり犬がいた。 左耳がなかった。 そいつが入っているダンボール箱には、ご丁寧にも伝言が書いてあった。 "どなたか育ててやって下さい" 「飼い主くたばれ」 俺は、自覚さえしている毒舌ぶりを発揮していた。 .
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