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しかし、急にイアンディール教官は大人の物静かな雰囲気へと変わった。
それに気付いたラウドはやや平常心を取り戻す。
「心配しないで。アタシ、見た目は美女でも心はちゃーんと男だから。取って食ったりなんかしないわよ。美少年」
しかし、発言はどうも先ほどと変わりはない。
見た目三、四十代のオッサンの発言ではない。
ラウドは無言で頬杖をついてなるべく目線をそらす。
すると、イアンディール教官はどことなく寂しそうに笑った。
「ねぇ、あの子…やっぱりフォース辞めちゃったんだ?」
「…そうみたいですよ」
意外にも普通の会話を始めたので、ラウドも無視せずに返答する。
ふと視線を向ければ、決してふざけた訳ではない大人の男性の顔のイアンディール教官。
ラウドは目をそらすのをやめた。
「美少年、名前は?」
「…ラウド=イグレンです」
「そう…ラウド君、ね。ありがとうラウド君」
突然お礼を言ってくるイアンディール教官にラウドは無表情のまま無言。
放置してあったココナッツミルクの上層部は、最早溶けた氷の水でやや透明だった。
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