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──目を逸らしてはいけないと思った
それは、この人の容姿がとかではなく
真剣な眼差しが気になったから
寂しそうな表情が気になったから
何に対して"ありがとう"と言われたのか気になったから
「あの子、思ったより元気そうで良かったわ」
イアンディール教官はやわらかく笑いながら無意識に顎をさする。
ラウドは頬杖をつきながら無言でジッと彼を見つめた。
「ラウド君ってさ、リーちゃんの恋人?」
"リーちゃん"。
きっとフィリアの事だろう。
「…いや、違うよ。今のところはな」
「イヤーン、って事はいずれそうなるかもっていう意味?うらやましいわぁ」
両手を頬に当てて顔を赤らめた教官。
敬語はもう使わず、素のまま。
しかしながら、彼女がいないのをいい事にラウドは言いたい放題だ。
しかし、今のところは全くの脈なし。
どうも悩みどころである。
「ねぇ、リーちゃんとの出会いってどんな感じ?どうやって知り合ったの?もしや、ラウド君って軍人?」
身を乗り出して鼻息荒く訊いてくるイアンディール教官に、ラウドは若干引きながらも「いや」と答える。
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