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──人込みの中に"ソイツ"はいた。
身長は十歳の子供程度くらい。
薄い黄土色の古びた布を頭から足…いや、もう地面に付くくらいまで覆い、全身を隠している。
顔も同じように布でぐるぐる巻きにされ、手には手袋。
完全に露出を無くしたソイツは"彼ら"の横を擦り抜けた。
二人の青年と、赤い猫を抱えた一人の女性。
ソイツは少しだけ振り向き、、
「──…あれは…」
そう小さく呟いた。
†
潮の匂いがほんのり風に混じる。
青い空には白い雲と白い海鳥。
「いいねーいいねー。やっぱ森の獣さん達よりも、町の女の子見てた方が和むねー」
近くを若めの女性が通り、それに対して陽気な声をあげたのは勿論の事、アイザック…もといアイル。
少し小高い所にある物見にラウド達はいた。
物見だけに設けられたようなこの場所にはベンチがあり、そこにラウドは座っている。
フィリアとアイルは柵となっている手すりに寄りかかり、すぐ目の前に広がる海を眺めていた。
「北に進んで港に来た、って事は…多分ベネスティアの町だな」
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