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ラウドとアイルは無言で全てを見守っていた。
十数年、彼女を縛り続けていた男はほんの数分で跪(ひざまず)かされた。
人間とは恐ろしい。
人間とは愚かだ。
力や魔法など関係無しに、強き者を縛り付ける事が出来るのだから。
此方に帰ってくるベルナとは対象に、ラウドは気絶しているダランクードの元に歩み寄る。
奴の懐を漁れば、これまた呆気なくお目当ての物が見付かった。
ラウドの手のひらには金色の鍵。
同時にアイルの腰に付けられた鍵と、ラウドの首元の鍵が熱を帯びた。
「…当たりだな」
ラウドの小さな呟きは静かに部屋中に響く。
何故だろうか──。
終わった。
事は終わったにもかかわらず、このどうしようもない虚しさは一体何故だろう。
ベルナは強く壁を殴った。
「…ッざけんじゃないよ…!あれだけ苦しめといてッ、何でこんな簡単に…!」
そう──簡単に終わったからこそ、悔しかった。
今までのベルナの苦しみは、晴らし切れぬまま終わってしまったから。
アイルは何も言わず、ただ腰にある鍵の熱を感じながらタバコを取り出し、火を付けるとゆっくりと吹かした。
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