14232人が本棚に入れています
本棚に追加
†
「──意外と、そんなでもありませんでしたね」
闘技場に冷ややかな声が放たれた。
紅い髪の少年…男装中のフィリアは息をつき、倒れている六人の男達を眺める。
その隣では銀髪の背の高い男、ルヴィが寂しそうに地面を見つめていた。
「…こんなものだったのか。こんな…」
此方も呆気ない出来事だった。
キングランクなど、ルヴィが本気を出せばほんの数回の瞬きで倒れてしまった。
そこに深紅の弾丸が加われば、六人の相手をするなど他愛ない。
弱い…弱過ぎた──。
ルヴィは今まで反乱しなかった事に後悔していた。
こんなにも簡単に終わるなど、考えた事もない。
「…どうしたものか。勝ったのに、勝った気分などしない」
ルヴィは槍をアクセサリー──ピンキーリングに戻し、会場を見渡した。
一つしか無い入り口に群がる観客達。
悲鳴をあげ、怒声をあげ、我先に、我先に。
見ているだけで腹が立つ。
今にでも噛み付いてしまいたい。
そんな想いをルヴィは必死に抑えていた。
そんな彼を横目にし、ため息をつくフィリア。
.
最初のコメントを投稿しよう!