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「…国には帰らん」
ややあってからルヴィの口からそんな答えが返ってきた。
アイルはタバコをくわえたまま「ふーん」と相づちを打つ。
「怖いというのもある。故郷が自分の知らぬ町に変わり果てていたら、今度こそ本当に居場所が無いと感じてしまうだろう。それが怖い。しかし…」
薄く目を開き、ルヴィはぽつりぽつりと話していく。
それにラウド、アイル、そしてルースとリスタは黙って耳を傾けた。
「しかし、オレ達は一度名を捨てているんだ。過去を捨て、これからを生きて行こうと決めた。だから、少なくともオレに故郷は無い」
過去を断ち切り、新たな人生を生き抜こうと心に決めた者の目はどうしてこうも澄んで、それでいて力強いのだろうか。
真っ直ぐな眼差し。
やはり、ラウドはこの瞳には馴れない。
ルヴィを直視出来ず、ただただ頭に谺(こだま)する彼の強い意志に心内で感嘆した。
ベッドの上ではルースが腕を組み、「うむ。なかなか男らしい堅い意志だな。感心感心」と数回頷く。
アイルも「お堅いこった」と苦笑していた。
そんな中、リスタだけは眉をひそめ下げる。
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