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車体が長くて、つるっとしたフォルムの車。古い白黒の映画に出てきそうだ。カフェの窓の前を通りすぎたとき、スモークガラスの窓が太陽の光を反射して、イエローゴールドの光がカフェの店内を照らしだした。ソフィーはいっしゅん目がくらんだ。目の前を飛びかう黒い点に目をしばたたかせながら、ソフィーは車を目で追う。車は坂をおりきったところでUターンし、ゆっくりもどってくると、なんの合図も出さず、真向かいにある書店〈ザ・スモール・ブックショップ〉の真ん前にとまった。
「ひょっとして、マフィアかも!」エルが大げさなことを言い出した。「パパの知り合いに、マフィアがいるんだ。その人はプリウスに乗ってるけど」
「あの車、ぜったいプリウスじゃないわ」ソフィーは、車と通りに立っているふたりの男をまた見た。
厚手のコートに手袋と帽子をつけた男たち。目は特大のサングラスでかくされている。
「寒がりなんじゃないの?」とエル。「サンフランシスコって涼しいんでしょ?」
ソフィーは、カウンターごしに、背後の時計と温度計を見た。「こっちはいま、二時十五分よ。気温は二十七度。寒いわけない。あの人たち、死にかけてるのよ。あっ」ソフィーは、いったん口をつぐんだ。「……またひとり出てくるみたい」
車の後部座席のドアがあいて、男がもうひとり、ぎこちなくおりてきた。通りに立っているふたりよりも、さらに大きい。男がドアを閉めたとき、いっしゅん、陽光がその顔をとらえ、男の肌が
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