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照り付ける太陽、鳴り響く蝉の声、今まさに季節は夏であった。
燃えるように熱いアスファルトの道路を車が熱気を発しながら行き交う。
そんな中、俺は運動神経が悪い身体を無理矢理走らせていた。
「やべーよ……遅刻じゃないか!?」
俺は右手にしている腕時計を見て完全に遅刻であることを悟った。
俺の名前は山島伊吹、月美高校一年の平凡な学生である。部活は音楽部でボーカルをやっている。
遅刻なんてどこの不良だよ……なんて走りながら頭の中でぐるぐる考えていた。
気づくともう学校が見えてくる。
俺は最後の追い上げと言わんばかりに全力疾走する。
門を駆け抜けた時だった。
この学校の門に寄り掛かってずっと空を仰いでいた人がいることに気付き、俺は足を止めてまた門に戻った。
確かにその人は門に寄り掛かっていた。
学ラン姿に綺麗な茶色の髪の毛で白いスニーカーを履いたごく一般の男子学生だ。
「あの……」
咄嗟に話しかけたのは自分でも意外だった。
学ラン姿の存在は無言で頷いて静かに校舎へ歩いていった。
……
しばしその去っていく姿に俺は見とれていた。
……
「あ!やべー遅刻!」
俺は気を取り戻してまた走り出したのだった。
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