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-部室-
相変わらず荒らされて汚い音楽部の部室は、楽譜が床に散乱していて楽器たちは横倒しになっている。
「なぁ、知ってるか?伊吹」
「ん?」
数少ない部員の浅倉元気が話しかけてきた。
浅倉とは同じクラスで話も合う仲のいい友達だ。
そんな浅倉が話してきた話題はすごく耳に痛い話だった。
「二組の方でいじめがあるらしいんだよ」
「いじめ?」
咄嗟に問い詰めて俺はこの話の続きを聞いた。
「この学校って私服だろ。でもいじめ受けてる奴は学ランなんだってさ」
「学ランだからいじめるってそれだけ?」
俺は少し頭に靄があるのを強引に抑えて、疑問に思ったことを浅倉に問い質した。
服装でいじめるなんてひどすぎるし……
「それがそいつ無言でなんと……あぁ!」
言葉を止めて浅倉は扉の方を指差した。
俺は指差した方に振り向く。
そこには浅倉が言っていた学ラン姿の人がいた。
よく見ると校門で会った男子である。
髪は少し長めでボロボロの手提げバッグを抱えていた。
「何の用?」
「……ありがとう…………」
短く言われた言葉の意味がよくわからなかった。
「浅倉、どこが変なんだよ。普通の子じゃないか?」
俺が言うと、浅倉は首を横に振った。
「そいつ女なんだよ」
「え?」
浅倉の言葉に思わず声をあげてしまった。
女?!……
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