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「篠崎……です」
篠崎という名字のこの子は実際に女なのだろうか。
女ならば確かに学ランは不自然である。
「あ……あの……」
「あぁ、わかったから。少し落ち着いて」
緊張しているのか、ただ単に人見知りな正確なのかわからないけど、言葉が散々で何を言っているのかわからない。
篠崎は俺の言葉を聞くと、目を閉じて一回ゆっくりと深呼吸をした。
「えーと、学ランなのはいらなくなった兄の学ランでお金がかからないからで……」
……
その後、篠崎のことをいろいろ聞いた。
家庭が貧しい家の長女で兄が一人という理由で学ラン姿であることなどを伝えられた。
話してみると案外普通の少女で、なぜ無口なのか不思議なくらいだった。
「あ、そろそろいくね」
何かに気がついたように部屋を出ていこうとした彼女を俺は呼び止めた。
「あのさ、よかったらまたこいよ」
俺の意外な言葉に彼女は茫然としていたが、すぐに小さく頷いて出ていった。
少し華やかだった部室がまたどんよりした部室に戻る。
「あぁ憧れるなぁ」
浅倉がいきなり話しかけてくる。
「は?なにが?」
「あんな子が俺たちの部活に入ってほしいよ」
真面目な顔つきで告げられた言葉は案外まともな願いだった。
「入るかどうかはあの子次第だろ」
「だよなぁ……」
俺の発言に浅倉は肩を落とした。
篠崎の名前を聞いていなかったな……
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