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まだあの時の傷が痛む。
私はその痛みを圧し殺して空を仰ぐ。
空は無情にも広く青い。陽は酷にも明るく輝く。
そんな中で校門に寄りかかっていた。
天国というものはあるのだろうか……
あるのならば私はいつ連れていかれるのだろう。
逆に思えば、地獄というものはあるのだろうか?
あるのなら私は連れていかれるのか……
私は一体……逝ったらどうなるのだろう……
校門にはもう生徒という存在は居らず、ポツンと一人私が寄りかかっている。
夏の風が私に染み込むように流れてくる。
変に湿気った風は私には害なのに、なぜか心地よく暖かかった。
「ねぇ、篠崎?」
不意に横から知っている声がした。
振り向けば、普通の服装をした男の人が立っていた。
確か……
山島君……
彼の姿に私は目を背けた。
なぜだかわからないけれど目を合わせることができない。
私に関わらない方がいいと、きっぱり言うつもりで私はまた空を仰いだ。
そんな私に思いがけない言葉が飛んでくる。
「その包帯どうしたの?」
何気ない一言のはずなのに、なぜか私という歪な存在は驚いていた。
というよりも、がっかりしたと言うべきなのだろう。
あぁ……なぜこの人は気づいてしまったのだろう……
昨日の出来事を知ればこの人は……いや、もう知ってしまっている?……
「階段……見なかったの?」
「え?」
短く返ってきた言葉に私はなんとなく安堵していた。
この人はなにも知らないではないか。
そんな安心も一瞬で終わりを刻む。
人としては普通なのに、やることは他人から見ると変態だ。なのに……
なのに、私はなぜか心から暖かいモノに包まれた。
「大丈夫か?」
そう言って私の額に触れる手が優しく包帯を解いた。
傷はそこまで深くはないけど、前髪で隠すには少し大きい傷が出てきたのだろう。
彼は茫然と私の傷を見つめている。
そして、ゆっくりと包帯を巻き直していった。
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