0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はナイトウォーリアを睨むように見つめながら思い返した。
思い返せば、このやり取りは十二年と三ヶ月前に遡る。
僕、カークライト・フォルテ・フォルニアは、フォルニア王国という国の王子だ。
大陸の中でも二番目に大きいフォルニア王国は緑豊かな騎士の国だ。
その国の王子……と言っても、十二人兄弟の九番目の王子な為、僕が生まれた時には王位は父上から一番上の兄上に渡っていた。
中途半端な九番目の僕は、城では殆ど誰にも相手にされることもなく生きていた。が、それは内でのことで、外では当然、国の王子として色んな人達から狙われる。
九番目とはいえ、城外で狙われたとなれば大問題。
すぐさま国王である兄上が兄弟それぞれに護衛を付けた。
僕の護衛。
それが彼――ナイトウォーリアで、初めて会ったのは十二年と三ヶ月前の話だ。
その当時四歳だった僕と同い年のナイトウォーリアに守られることになるのだが、彼は全く護衛をしなかった。
……むしろ、僕より弱かった。
故に、守られるはずの僕が必死に訓練し、自分と彼、二人分の命を守らなくてはならなかった。
守られておきながら、ナイトウォーリアは先程のような態度で僕から学院の宿題を毎回奪おうとする。
そう。借りるのではなく、奪おうとするのだ。彼は。
幼かった僕は彼の口車に乗ってしまい、何度も何度も宿題を奪われ続けた。
それからは「絶対に宿題死守」という目標を掲げ、彼に立ち向かっている。
睨むようにナイトウォーリアを見ていた僕は思い出してしまった怒りで、拳を震わせていた。
僕に睨まれているナイトウォーリアも、流石に怒ったのか身体を震わせている。
言い過ぎてしまったのだろうか。そう思って、謝ろうとした瞬間、彼は頬に両手を当てた。
「そ、そんなに見つめられては照れるではありませんか、ライト様……!」
顔を赤くして、くねっと身をしならせてナイトウォーリアは僕を見た。緑色の目には何故か涙が溜まっている。
最初のコメントを投稿しよう!