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「……はい?」
思いがけない言葉に、僕はつい聞き返してしまった。
「ライト様。貴方様はご自分のことですからご存知ないでしょう。貴方様のその太陽の光をも反射するような輝かんばかりの金の髪、鋼の煌めきなど小さな光と言わんばかりに輝く銀の瞳、そして、整ったそのご尊顔……。貴方様に見つめられるだけで、若輩者な私が狼さんになってもよろしいのですかっ?!」
かっと緑色の目を見開き、ナイトウォーリアは噛むことなく叫んだ。
震えていたのはそっちの震え?!
痛み出してきた頭に手を当てながら、僕は溜め息を吐いた。
「…………済まないが、君を解雇してもいいか? 兄上にも相談して」
こめかみに手を当て、僕は首を緩く振る。
「……不要、ですか? 私は不要なのですか!? ここまでライト様をお守りしたこの私をですか?!」
目をこれでもかというくらい見開いて、ナイトウォーリアは僕の方に身を乗り出して訴える。
「いや、守るって、君、全然守ってないじゃないか。僕が守っていたじゃないか」
「本気で仰ってますか?」
「本気も本気」
こっくりと僕が頷くと、ナイトウォーリアは項垂れた。
しばらくの間、沈黙が支配した。
「……分かりました。ライト様がそこまで仰るのなら、私も甘んじて受けましょう」
ぽつりとナイトウォーリアは呟き、神妙な面持ちで僕を見た。
「ただし、一つだけお願いがございます」
「何だ?」
「その宿題を私に寄越しなさい。そして、今日、一緒に寝て下さい」
何かをおねだりするような瞳でナイトウォーリアはこちらを見つめ、僕の手を両手で握った。
キラキラと音が鳴るような輝きを目に宿し、彼はじっと僕を見つめる。
「ちょっと待ってくれ。何故、君に僕が頑張って終わらせた宿題を渡さないといけない? そして、何故、君と一緒に寝ないといけない? ついでに言うが、一つだけと言っておきながら、二つ言っているが」
「記憶にございません」
悪びれた様子もなく、笑顔で小首を傾げてナイトウォーリアは答えた。
「君、どれだけ記憶力が悪いんだ? さっき君が言った言葉だぞ、ついさっき!」
もう一度、机を叩き、僕は目の前の護衛という名の家臣を見た。
「ライト様は記憶力がとても宜しいのですね……。貴方様の御身をお守りすることが出来て、貴方様のことを知ることが出来て、私はとても光栄でございます」
恍惚とした表情で、ナイトウォーリアは言った。
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