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……どうしよう。彼が今まで以上に今回は何処かへ行ってしまっているように見える。
僕は段々、怖くなり、机に広げられたノートを集め、整え、鞄に入れる。
早く、ここから逃げた方がいい。
今まで培ってきた様々な知識、経験を総動員した第六感がそう告げているように感じた。
鞄をしっかり持ち、もしもの時の為の武器を懐に入れ、僕は足早に部屋を出た。
城門へ向かいながら、僕は溜め息を吐く。
本当にナイトウォーリアのことで不安になった。
ナイトウォーリアは僕に向かって、よく分からない変態発言をすることが多い。
もちろん彼の良いところも、長い付き合いなので知っているのだが、普段は彼の悪いところというか変態なところが本当によく目立つ。
初めて会った時はまだ、今よりはまともだった……と思う。
兄弟がいるのに一人だった僕を、隠れている僕を一番に見つけるのはいつも彼だった。
子供心に、僕を見つけてくれることがとても嬉しかった。
『王子と護衛』というより『友達』になりたい、と思ったくらいに嬉しくて、ついつい宿題を渡していたくらいだ。
今までの言動の限りでは、彼は僕の思いと違うようだが。
もう一度溜め息を吐き、僕は近くになっている城門をくぐった。
城から出て、僕は学院へと続く道を歩いた。
城から近い位置にある学院へと続く通い慣れた道は、今日は何故か人通りが少ない。
普段なら学院へ向かう生徒や教師、自分を売り込もうとする人々で結構活気に溢れている。なのに、今日は誰とも言葉を交わしていない。
嫌な予感がした。
こういう時は必ずと言ってもいい程、王族、貴族などを狙う者達が現れる。
僕は前を向いて、少し離れた場所に立つ黒い影を見た。
黒い影は僕を見つけるとすぐ近寄ってきた。
そして、開口一番、黒い影はこう言った。
「カークライト王子だな。大人しく一緒に来て頂こうか」
お決まりの言葉を言い、黒い影……男は一緒に来た仲間達と共に僕を威嚇しようと立ちはだかる。
捕まる気がない僕は懐に隠していた二刀の短剣を持ち、溜め息をそっと吐いた。
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