一話 王子と家臣 ~十二年と三ヶ月の抗争~

6/8
前へ
/8ページ
次へ
……しまった。ちゃんとした武器を用意しておくべきだった。 とりあえず、短剣を構え、僕はいつでも攻撃が出来るように様子を窺う。 その時だった。 「そこの不届き者。我が主、カークライト様に刃を向けるとは覚悟は出来ているかっ?!」 何だか役者のような言い回しで、ナイトウォーリアが現れた。 「ライト様、ご無事ですか?!」 「ああ、大丈夫だ」 僕が頷くと、ナイトウォーリアは安堵の表情を見せた。 「もう護衛が来たか。有無を言わさず捕まえれば良かった」 舌打ちをしながら、男達も剣を構えた。 「カークライト様に刃を向けた罪、その身で償え!」 そう言って、ナイトウォーリアは剣を鞘から抜き払い、僕を守るように前に立った。 睨み合う両者の間に風が吹く。 辺りはしばらくの間、静まり返り、風の音だけが響く。 その静寂を壊すかのように、ナイトウォーリアが一歩動いた。 その瞬間、空気が抜けるような音が聞こえた。 「……ナイト……」 音の正体に気付いた僕は、低い声で問い質すように名を呼ぶ。 「申し訳ございません、ライト様。私のマジメモードは三分が限界でした。てへっ」 舌をぺろりと出し、ナイトウォーリアは僕に謝った。 「……だったら、その身で償えとか彼らに言わずに立ち向かった方が早いだろう……」 再び頭痛がして、こめかみを押さえながら、僕は嘆息した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加