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笑う女
一日中働き続けてクタクタになった体を、何とか引きずって家路を急ぐ。
朝から晩までカツカツに詰め込むバイト生活にも慣れた筈なのに、やっぱり夜になると体が悲鳴を上げた。
疲れすぎて食欲もないくせに鳴り出したお腹の虫を鳴き止ませるべく、コンビニに入る。
レジに並び会計を待っているとジーンズのポケットに突っ込んでいた携帯が震えた。
私は一つため息をつくと、勢いよく電話に出た。
「よっ!お疲れっ!」
今出す事のできる元気をこの電話で使い果たすくらいの気持ちで喋り出すと、レジの男の子がビクッとするのが見えた。
電話の向こうでも雅人の呆れたような声がした。
「…毎日元気だなぁ」
「当たり前じゃん。それだけが取り柄なんだから」
私から元気でいる事を取ってしまえば残る物は何もない。
元気があれば何でも、とはよく言ったものだ。
雅人はクスクス笑いながら話を続けた。
「あのさ、話があんだけどこの後時間あるか?」
「もちろん!じゃあ、後10分くらいしたら行くね」
電話を切り、また一つ大きなため息をつくとレジの男の子が訝しげに私を見つめてくる。
気まずい空気に私は逃げるようにコンビニを後にした。
雅人とは付き合ってもうすぐ2年になる。
働けど働けどお金は飛んでいくばかりで、身心共に疲れ果てていた時に雅人が励ましてくれたのがきっかけだったと思う。
沈んだ気持ちと疲れた脳みそでは、ふわりと注ぐ雅人の優しさを拒む事が出来なかった。
基本的に人付き合いが苦手な私が、何故誰かと付き合おうと思ったのかは分からない。
分からないけど、とりあえず一人ではない今の状況は少なからず私を慰めてくれる。
同時に一人ではないが故に使わなければならない神経に仕事以上の疲労感を感じる事にもなる。
この矛盾も私には理解できない。
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