それは突然に

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そう…。 木の葉も、草原も、花も、絵に描いたかのように動きを止めている。 窓から出した顔にも、優しい風は感じない…。 「風が止まるなんて……こんな事、初めて…」 ユベルは何か悪い予感のようなものを感じながら、身支度を整えて診察室へ向かう。 「何事もなければ良いけど…」 そう呟いて、ビーカーに入れた薬草に魔力を込めるために呪文の詠唱を始めた。 「すべての精霊たちよ、癒しの力を此処に…」 その言葉に呼応するかのように、かざした手の中にはかすかな光が灯り………、 力無く消えてしまった。
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