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暑い暑い夏の日。
僕はお父さんとお母さんと妹の春菜と一緒に、東京から電車を乗り継ぎ軽井沢にある叔母さんの旅館にやって来た。
ガラガラガラ―――。
「こんにちは」
玄関を開けお父さんはドカドカ勝手に上がって行く。
すると家の奥からパタパタ…とスリッパを履いて走って来る音が聞こえた。
「まぁーいらっしゃい。信ちゃん、春ちゃん。良く来てくれたわ」
ニコニコ笑いながら叔母さんは僕と春菜に言った。
僕の名前は信勝という。でも叔母さんはいつも僕の事を『信ちゃん』と呼ぶ。
本音を言えば『信ちゃん』と呼ばれるのは嫌いだ。
「信ちゃん」
僕の気持ちを知らない叔母さんは、尚も言う。
「久し振りに来てくれたから、叔母さん夕食にごちそう作ってあげるね。信ちゃんの好きな物、お母さんからちゃんと聞いておいたから楽しみにしていてね」
笑顔で言う叔母さんに、僕もつられて笑顔で答えた。
「お兄ちゃんの分だけなの?」
僕の隣にいる春菜が寂しそうに叔母さんに言う。
「もちろん春ちゃんの好きな物もいっぱいあるわよ」
叔母さんの言葉に、春菜は嬉しそうな顔をした。
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