323人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
爽やかな風が吹き抜けた。とても気持ちよい。幾度も朝の空気を胸一杯に吸い込んだ。
爽快な気分とは相反して気鬱を感じる。
極ありふれた日常はいつまでも続くとは限らない。今日に限って平凡な日常が、変わってしまうような予感がした。
少年は青い空を仰ぎ見て吐息をつく。そんな予感は時として的中するのだ。
頬を吹き抜けた風が髪を弄ぶ。見慣れた風景の中に淡い茶髪で、制服を恰好よく着こなした友人がいた。
紺色のブレザーにしっくりと合ったネクタイ。光を反射させて輝くボタンとベルト。遠くからでもすらりとした身長は目を引く。
友人は四季桜の姿を一目見ただけで顔を綻ばす。
「桜、お早うー!!」
大空白らは早々と駆け寄り、颯爽と飛びついた。
「今日も一段と美しい」
「抱きつくな。それ以前に飛びつくな。離れろ!」
首に回された手を掴み引き離した。
何故か白らは悲しげで不満そうにしている。その理由が全く以て分からない。
最初のコメントを投稿しよう!