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「あのなぁ。美しいって言うな。好きでこんな顔になった訳じゃない」
中性的な顔をしかめて桜は外方を向いた。生まれながらに自分の容姿が、選べないなんて不公平だと神に訴えたい。
「僕は美しい桜が羨ましいよ」
「羨ましくない!」
少年にとってコンプレックスは、この中性的な顔立ちだ。劣等感を抱かずにはいられない。
白らは口元に柔らかな笑みを漂わす。恍惚と桜を眺めて、しなやかな動きで手を取ろうとした。
「触るな」
その手を払い除けた。きりりとした即ち、恰好いい顔立ちの友人を睨む。
目鼻立ちが整い、更に眉と唇は文句なしに形がよい。まさに優れた現代風の容姿だ。
「行くぞ。学校に」
家が建ち並ぶ道を桜は早足で歩き始める。
白らの「待ってよーー」と言う声が聞こえたが、相手にしないで進み続けた。
「無視するなんて酷い。酷い!」
鬱陶しい程腕に手を絡ませてくる。即座に振り払う。
「無視するって事は……」
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