入学-ニュウガク-

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つまり…、俺と同室になったこいつは完全に貧乏くじを引いたって訳か。 何だか、段々とこの目の前の色男が不機嫌な理由が掴めて来たぞ。 最も、俺はこいつと仲良くする気は全く無いけど。 というか、その前に…何度も繰り返させてもらう。 絶対にこいつとは気が合わないって自信がある。 「ササル、だっけ。お前。」 「どうして名前知ってるんだよ。」 「…お前なぁ…。」 ムッ、としながら見上げた俺に、そいつは溜息を吐きながら頭を掻く。 そんな仕草も似合うから、ちょこっとだけムカつき度合いが高まったのは言うまでも無い。 「俺とお前は同室者だって言ってるだろ。…名前くらい、ネームプレート見れば分かる。」 「ああ…。」 「お前に〝あんた″って呼ばれるのは感に触るから、一応名乗っておく。俺の名前はシン。七海 心(ナナミ シン)。シン様って呼べば良い。」 「シン。」 「様。」 「シン。」 「様。」 「シン。」 「……てめぇ。」 冗談だと思って、こいつ――…シンが折れるのを待ってみた俺だけど。 思った以上にそれは本気で発した言葉だったらしい。 え? 様を付けろと? ……絶対無理。 大体、俺が様付けるのって…誰だろうな。 怒った時の満潮様とか、海斗様くらいじゃないか? もっとも、今は二人とも居ないけどさ…。 そう思うと、嫌でも自覚する…。 あの二人が、そして…武がここに居ないんだって。 「…まぁ、良い。後悔するのは自分だからな。」 「何言ってんだ、あんた。頭おかしい?」 「てめぇ…。」 こいつ…、何度そのビームでも発射しそうな目で睨んだら気が済むんだよ。 シンって、一応…美形だから。 というか、かなり美形だから…、睨むと相当怖いんですよね。 なのに、無自覚に睨んで…いや、こいつだからな。 それは計算の内かも知れない。
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