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今しか言えないと…
思ったから。
「てめぇ、普通に…素直に言えよ」
その俺の目の前で、
形の良い唇が動いて…ものすごく嫌味ったらしくて俺様で…
憎らしくて、傲慢で…
だけど、
何度も何度も、もう一度聞きたいと願った声音が響いた。
「シ…ン…?」
「あぁ。そうだよ。――…ったく、俺が何のためにお前を逃がそうとしたか…てめぇ、全く理解してねぇじゃねーか」
「帰ってきて一言目に文句かよ…」
「まぁな」
眉間に皺をよせて、
シンはそこでやっと俺を正面から見つめた。
遠くの方で燃える炎が、シンの瞳に写っていた。
そして、それに重なるようにして…
俺も。
「…ごめんな、ササル。でも…ありがとう」
「……」
シンに感謝されると気持ち悪い!って、
憎らしいことを言おうと思って開いた口は…
シンの形の良い唇に言葉を封じ込められて、
それ以上の言葉を発することが出来なかった。
「ん、…んぅ」
「ササル、もう離してなんてやんねぇ…」
唇を離してギュッと抱きしめられて、
そこでやっと俺は実感した。
「シン…シン…」
「ん?どうした…?」
「やっと、アンタに会えた」
「……」
やっと、俺が会いたかったシンに会えたんだ…
そう実感した。
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