1967人が本棚に入れています
本棚に追加
「守れなくて…ごめん…。苦しい思いさせて…ごめん…」
炎が熱風を運んできていた。
密閉された空間の中で、
微かに流れる空気が炎を増長させているんだろう。
または――…
炎を育てているのは、この研究所に染み付いた憎しみか…。
「どうして俺は、いつだって守れないんだろうな…」
こうして憎しみを増やす事しか出来なかった俺は…
なんて馬鹿なんだろう。
大切な人を――…
それも、今度は本当に、一つを除いて全てを失ってしまう。
「泣く資格なんて…、俺にはないのに…!!」
ポツンッと足に当たった雫を拭って、
俺は叫んで首を左右に振る。
そして、目の前の二人を抱きしめて、目蓋を閉じた。
「――…イルカ、お前に俺を半分やれれば良かったのに」
そうすれば、きっとお前は…
こんなにも苦しむことは無く、こんなにも強さを求める事は無かった。
でも、全てはやはり…後悔にしかならない。
その時…ドオンッと、
今までにない大きな爆音が響いて、
ピシピシという音が崩れるような音に変わった。
「ササル…幸せになれ…」
俺の目の前が、真っ赤に染まったのは――…
その言葉のすぐ後だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!